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* 2920. MidYear, v6 (真央の月、6巻) [#necec81e]

2920 真央の月(6巻)
第一紀最後の年
カルロヴァック・タウンウェイ著

|~公式英語版|~公式日本語版|
|2 Mid Year, 2920&br;Balmora, Morrowind|2920年 真央の月2日&br;バルモラ (モロウウィンド)|
|''The Imperial army is gathered to the south,''said Cassyr.''They are a two weeks march from Ald Iuval and Lake Coronati, heavily armored''&br;Vivec nodded.  Ald Iuval and its sister city on the other side of the lake Ald Malak were strategically important fortresses. He had been expecting a move against them for some time. His captain pulled down a map of southwestern Morrowind from the wall and smoothed it out, fighting a gentle summer sea breeze wafting in from the open window. &br;''They were heavily armored, you say?'' asked the captain. &br;''Yes, sir,'' said Cassyr. ''They were camped out near Bethal Gray in the Heartland, and I saw nothing but Ebony, Dwarven, and Daedric armor, fine weaponry, and siege equipment.'' &br;''How about spellcasters and boats?'' asked Vivec. &br;''A horde of battlemages,'' replied Cassyr. ''But no boats.'' &br;''As heavily armored as they are, it will take them at least two weeks, like you said, to get from Bethal Gray to Lake Coronati,'' Vivec studied the map carefully. ''They'd be dragged down in the bogs if they then tried to circle around to Ald Marak from the north, so they must be planning to cross the straits here and take Ald Iuval.  Then they'd proceed around the lake to the east and take Ald Marak from the south.'' &br;''They'll be vulnerable along the straits,'' said the captain. ''Provided we strike when they are more than halfway across and can't retreat back to the Heartland.'' &br;''Your intelligence has once again served us well,'' said Vivec, smiling to Cassyr. ''We will beat back the Imperial aggressors yet again.''|「帝国軍が南に集結しております」キャシールは言った。「二週間の進軍でアルド・イウバルとコロナチ湖に到達するでしょう。それと、極めて重装備でありました」&br;ヴィベクはうなずいた。アルド・イウバルと湖の対岸の姉妹都市、アルド・マラクは戦略の要地とされる城砦だった。ここしばらく、敵が動くのではないかと懸念していた。ヴィベクに仕える将軍がモロウウィンド南西部の地図を壁から引きはがすと、開け放しの窓から舞い込んでくる心地よい夏の海風と格闘しながら、手で撫でつけてまっすぐに伸ばした。&br;「重装備だと言ったな?」と、将軍は訊いた。&br;「はい、将軍」キャシールは言った。「ハートランドはベサル・グレイにて野営しておりました。どの鎧も黒檀製やドワーフもの、デイドラものばかりで、上等な武具や攻城兵器も確認できました」&br;魔術師や船は?」と、ヴィベクは訊いた。&br;「魔闘士の軍団がおりましたが--」キャシールは答えた。「船はないものかと」&br;「それほどの重装備なら、ベサル・グレイからコロナチ湖までは確かに二週間はかかる」ヴィベクは地図をじっくりとながめた。「さらに北からまわり込んでアルド・マラクへ向かおうとすれば、沼地にはまってもたつくことになろう。となれば、この海峡を越えてアルド・イウバルを攻め落とそうと考えるにちがいない。それから湖岸沿いに東進し、南からアルド・マラクを奪おうとする」&br;「海峡を越えてくるなら、やつらは袋のねずみですな」と、将軍は言った。「半分ほど渡りきってしまえばもうハートランドには引き返せない。そこで一気に襲いかかるのです」&br;「またもやそなたの機知に助けられたようだ」ヴィベクはそう言い、キャシールに笑いかけた。「今一度、帝国の侵略者どもを撃退してやろうぞ」|
|3 Mid Year, 2920&br;Bethal Gray, Cyrodiil|2920年 真央の月3日&br;ベサル・グレイ (シロディール)|
|''Will you be returning back this way after your victory? '' asked Lord Bethal.&br;Prince Juilek barely paid the man any attention.  He was focused on the army packing its camp. It was a cool morning in the forest, but there were no clouds.  All the makings of a hot afternoon march, particularly in such heavy armor.''If we return shortly, it will be because of defeat'' said the Prince.  He could see down in the meadow, the Potentate Versidue-Shaie paying his lordship's steward for the use of the village's food, wine, and whores.  An army was an expensive thing, for certes.&br;''My Prince,'' said Lord Bethal with concern. ''Is your army beginning a march due east?  That will just lead you to the shores of Lake Coronati.  You'll want to go south-east to get to the straits.''&br;''You just make certain your merchants get their share of our gold,'' said the Prince with a grin. ''Let me worry about my army's direction.''|「勝利しておきながら、かように帰還なさるおつもりですか?」ベサル卿は訊いた。&br;ジュイレック王子はまるでうわの空だった。野営地の後片づけをしている軍隊に意識を集中させていた。肌寒い森の朝だったが雲ってはいなかった。午後の進軍は暑さとの戦いになりそうだった。これだけの重装備ならなおさらだ。&br;「早期撤退は敗北してこそするものでしょう」と、王子は言った。遠くの牧草地で、支配者ヴェルシデュ・シャイエが村の食料や酒、それに女を用立ててくれた執事に謝金を渡しているのが見えた。軍隊とはじつに金がかかるものだ。&br;「しかしながら、王子…」と、ベサル卿は不安げに訊いた。「このまま東進なさるおつもりですか? それではコロナチ湖の湖畔にたどりつくだけでしょう。南東から海峡へ向かわれたほうがよいのでは」&br;「あなたは村の商人が約束の報酬をもらったかどうかを案じていればいい」と、王子は笑みを浮かべて言った。「軍隊の行き先は私が考えましょう」|
||2920年 真央の月16日&br;コロナチ湖 (モロウウィンド)|
||ヴィベクは広大な青い湖面の向こうをながめた。みずからと軍の姿が青い水面に映り込んでいた。が、帝都軍の姿は映り込んではいなかった。森で待ち受ける災難を嫌ってとっくに海峡へ到着しているはずだった。羽根のように薄っぺらなひょろ長い湖岸の木々が、邪魔になって海峡の様子はほとんどうかがえなかったが、かさばる重装備に身を包んだ一団が誰の目にもとまらずに音もなく移動することなど不可能だった。&br;「もう一度地図を見せてくれ」ヴィベクは将軍を呼ばわった。「他の進路があるとは考えられないか?」&br;「北の沼地には哨兵を配備しております。浅はかにも、やつらが沼地に入ってもがいている可能性もないとは言えませんからな」と、将軍は言った。「少なくとも報告があるでしょう。が、湖を越えるとしたら海峡を抜けるより他はありません」&br;ヴィベクはまた湖面に映った影を見つめた。彼をからかうようにゆらゆらと揺れていた。それから、ヴィベクは地図に視線を戻した。&br;「スパイか…」ヴィベクはそう言うとキャシールを呼びつけた。「敵軍は魔闘士の一団を引き連れていたと言ったが、どうして魔闘士だとわかったのだ?」&br;「灰色の法衣に謎めいた紋章を身につけておりましたから…」と、キャシールは述べた。「魔闘士だと直感しました。あれだけの大人数でしたし。軍が治療師ばかりを同道させているとは思えませんので」&br;「浅はかなやつめ!」ヴィベクは怒鳴った。「やつらは変性の技巧を学んだ神秘士なのだぞ。水中呼吸の魔法を全軍にかけたにちがいない」&br;ヴィベクは手ごろな見通しのきく場所へ走って、北の方角を見渡した。水平線に浮かぶ小さな影でしかなかったが、対岸のアルド・マラクから襲撃の火の手があがっているのが見えた。ヴィベクは怒りの雄たけびをもらした。将軍はただちに、城砦を守るべく湖をまわり込むよう軍隊に指示を出しなおした。&br;「ドワイネンに帰れ」ヴィベクはキャシールに向かって言い放つと戦いに加勢すべく出発した。「わが軍はもはやおまえの力を必要としていない」&br;モロウウィンド軍がアルド・マラクに迫ったときにはもう手遅れだった。街は帝国軍の手に落ちていた。|
||2920年 真央の月19日&br;シロディール領帝都|
||支配者ヴェルシデュ・シャイエが帝都に凱旋すると、熱烈な歓迎が待っていた。男も女も通りにずらりと並んで、アルド・マラク陥落の象徴である大君主を褒め称えた。王子が帰還していたらこれ以上の群集が出迎えたであろうことはシャイエにもわかっていた。それでも、彼は大いに気を良くしていた。タムリエルの民がアカヴィル人の到着を歓迎するなどそれまでにないことだった。&br;皇帝レマン三世は心のこもった抱擁で彼を出迎えると、やおら王子から届いた手紙を突きつけてきた。&br;「どういうことかね」皇帝はようやく言った。喜んでいながらもとまどっていた。「湖にもぐったと?」&br;「アルド・マラクは、難攻不落の要塞です」大君主はそう言った。「それに加えてわれらの動きを警戒しているモロウウィンド軍が周囲を巡回しています。攻め落とすには不意を突いて鎧の頑丈さにものを言わせて攻撃するしかありません。水中でも呼吸できる魔法をかけることで、われらはヴィベクに感づかれないうちに移動することができました。水中では鎧の重みもさほど気になりません。そして守備のもっとも手薄な砦の西側の水締めから攻め入ったのです」&br;「素晴らしい!」皇帝は歓声をあげた。「驚くべき戦術家だな、ヴェルシデュ・シャイエよ! そなたの父親にもそれだけの才覚があったら、タムリエルはアカヴィルの領土になっていただろう!」&br;実のところ、その計画はジュイレック王子が考えたものだった。シャイエとしては、王子の功績を横取りする気はみじんもなかったが、大失敗に終わった260年前の祖先の侵略のことに皇帝が触れたとき決心したのだった。シャイエは控えめな笑みを浮かべて、おもうぞんぶん賞賛を味わった。|
||2920年 真央の月21日&br;アルド・マラク (モロウウィンド)|
||サヴィリエン・チョラックは腹ばいになって壁まで進み、モロウウィンド軍が沼地と砦に挟まれた森の中へ撤退していくのを銃眼からじっと見つめた。絶好の攻撃機会のように思われた。敵軍もろとも森を焼き払ってしまえばいい。ヴィベクさえ捕らえてしまえば、敵軍はアルド・イウバルもおとなしく明け渡すかもしれない。ショラックはその案を王子に持ちかけてみた。&br;「ひとつ忘れているようだけど」ジュイレック王子は一笑にふした。「休戦交渉中は敵の兵士や指揮官に手を出さないと約束しているんだ。アカヴィルでの戦いに誇りは不要なのかい?」&br;「お言葉ながら、私はタムリエルで生まれ育ち、祖国を訪れたことはございません」蛇男は答えた。「が、それでもあなたの流儀はどうも解せない。五ヵ月前に帝都の闘技場で戦ったときもあなたは金銭を求めようとせず、私は一銭も払わなかった」&br;「あれは遊びだから」王子はそう言うと執事にうなずいてみせ、ダンマーの戦士長を迎え入れた。&br;ジュイレックがヴィベクに会うのは初めてだった。この男が神の化身であるという話は聞いていたが、目の前に現れたのはひとりの男だった。屈強で端正な顔した男で、知性にあふれる顔をしていたもののやはりただの男だった。王子はほっとした。ただの男となら話せる。神であるなら話はべつだが。&br;「はじめまして、わが称えるべき好敵手」と、ヴィベクは言った。「お互いに手詰まりのようだな」&br;「そうともかぎりません」王子は言った。「あなたはモロウウィンドを明け渡したくはないし、私としてもそれをとがめることはできません。が、外敵の侵略から帝都を守るためモロウウィンドの沿岸地域はどうしても押さえておきたい。それと、この場所のような戦略の要地である国境の砦もほしい。アルド・ウンベイル、テル・アルーン、アルド・ランバシ、テル・モスリブラもすべて」&br;「して、見返りは?」と、ヴィベクは訊いた。&br;「見返りだと?」サヴィリエン・チョラックは笑い飛ばした。「いいか、勝者はわれらだ。おまえじゃない」&br;「見返りとして」ジュイレック王子は慎重になって言った。「帝国はモロウウィンドを襲わないと約束しましょう。もちろん、そちらから攻めてきた場合は別として。侵略者があれば帝国海軍が助けに駆けつけましょう。それから領土も分け与えましょう。ブラック・マーシュから好きな土地を選んでください。帝都にとって無用な土地であればですが」&br;「悪くない条件ですが」間をおいて、ヴィベクは言った。「即答はできかねますな。シロディールが奪ったぶんだけ補償してくれるなどこれまでになかったことですから。数日の猶予をいただけますか?」&br;「では、一週間後に会いましょう」王子はそう言って微笑んだ。「それまでにそちらが攻撃をしかけてくることがなければ、秩序は保たれるでしょう」&br;ヴィベクは王子の私室をあとにした。アルマレクシアの読みの正しさを感じながら。戦争は終結した。ジュイレック王子は立派な皇帝になるだろう。&br; 時は南中の月へと続く。|
|16 Mid Year, 2920&br;Lake Coronati, Morrowind|2920年 真央の月16日&br;コロナチ湖 (モロウウィンド)|
|Vivec stared across the blue expanse of the lake, seeing his reflection and the reflection of his army in the cool blue waters.  What he did not see was the Imperial Army's reflection.  They must have reached the straits by now, barring any mishaps in the forest.  Tall feather-thin lake trees blocked much of his view of the straits, but an army, particularly one clan in slow-moving heavy armor could not move invisibly, silently.&br;''Let me see the map again'' he called to his captain. ''Is there no other way they could approach?''&br;''We have sentries posted in the swamps to the north in case they're fool enough to go there and be bogged under,'' said the captain. ''We would at least hear about it.  But there is no other way across the lake except through the straits.''&br;Vivec looked down again at his reflection, which seemed to be distorting his image, mocking him.  Then he looked back on the map.&br;''Spy,'' said Vivec, calling Cassyr over. ''When you said the army had a horde of battlemages, what made you so certain they were battlemages?''&br;''They were wearing gray robes with mystical insignia on them,'' explained Cassyr. ''I figured they were mages, and why else would such a vast number travel with the army?  They couldn't have all been healers.''&br;"You fool!" roared Vivec. ''They're mystics schooled in the art of Alteration.  They've cast a spell of water breathing on the entire army.''&br;Vivec ran to a new vantage point where he could see the north.  Across the lake, though it was but a small shadow on the horizon, they could see gouts of flame from the assault on Ald Marak.  Vivec bellowed with fury and his captain got to work at once redirecting the army to circle the lake and defend the castle.&br;''Return to Dwynnen,'' said Vivec flatly to Cassyr before he rode off to join the battle. ''Your services are no longer needed nor wanted.''&br;It was already too late when the Morrowind army neared Ald Marak.  It had been taken by the Imperial Army.|ヴィベクは広大な青い湖面の向こうをながめた。みずからと軍の姿が青い水面に映り込んでいた。が、帝都軍の姿は映り込んではいなかった。森で待ち受ける災難を嫌ってとっくに海峡へ到着しているはずだった。羽根のように薄っぺらなひょろ長い湖岸の木々が、邪魔になって海峡の様子はほとんどうかがえなかったが、かさばる重装備に身を包んだ一団が誰の目にもとまらずに音もなく移動することなど不可能だった。&br;「もう一度地図を見せてくれ」ヴィベクは将軍を呼ばわった。「他の進路があるとは考えられないか?」&br;「北の沼地には哨兵を配備しております。浅はかにも、やつらが沼地に入ってもがいている可能性もないとは言えませんからな」と、将軍は言った。「少なくとも報告があるでしょう。が、湖を越えるとしたら海峡を抜けるより他はありません」&br;ヴィベクはまた湖面に映った影を見つめた。彼をからかうようにゆらゆらと揺れていた。それから、ヴィベクは地図に視線を戻した。&br;「スパイか…」ヴィベクはそう言うとキャシールを呼びつけた。「敵軍は魔闘士の一団を引き連れていたと言ったが、どうして魔闘士だとわかったのだ?」&br;「灰色の法衣に謎めいた紋章を身につけておりましたから…」と、キャシールは述べた。「魔闘士だと直感しました。あれだけの大人数でしたし。軍が治療師ばかりを同道させているとは思えませんので」&br;「浅はかなやつめ!」ヴィベクは怒鳴った。「やつらは変性の技巧を学んだ神秘士なのだぞ。水中呼吸の魔法を全軍にかけたにちがいない」&br;ヴィベクは手ごろな見通しのきく場所へ走って、北の方角を見渡した。水平線に浮かぶ小さな影でしかなかったが、対岸のアルド・マラクから襲撃の火の手があがっているのが見えた。ヴィベクは怒りの雄たけびをもらした。将軍はただちに、城砦を守るべく湖をまわり込むよう軍隊に指示を出しなおした。&br;「ドワイネンに帰れ」ヴィベクはキャシールに向かって言い放つと戦いに加勢すべく出発した。「わが軍はもはやおまえの力を必要としていない」&br;モロウウィンド軍がアルド・マラクに迫ったときにはもう手遅れだった。街は帝国軍の手に落ちていた。|
|19 Mid Year, 2920&br;The Imperial City, Cyrodiil|2920年 真央の月19日&br;シロディール領帝都|
|The Potentate arrived in the Imperial City amid great fanfare, the streets lined with men and women cheering him as the symbol of the taking of Ald Marak.  Truth be told, a greater number would have turned out had the Prince returned, and the Versidue-Shaie knew it.  Still, it pleased him to no end.  Never before had citizens of Tamriel cheered the arrival of an Akaviri into their land.&br;The Emperor Reman III greeted him with a warm embrace, and then tore into the letter he had brought from the Prince.&br;''I don't understand,'' he said at last, still joyous but equally confused. ''You went under the lake?''&br;''Ald Marak is a very well-fortified fortress,'' explained the Potentate. ''As, I might add, the army of Morrowind has rediscovered, now that they are on the outside.  To take it, we had to attack by surprise and with our soldiery in the sturdiest of armor.  By casting the spell that allowed us to breathe underwater, we were able to travel faster than Vivec would have guessed, the weight of the armor made less by the aquatic surroundings, and attack from the waterbound west side of the fortress where their defenses were at their weakest.''&br;''Brilliant!'' the Emperor crowed. ''You are a wonderous tactician, Versidue-Shaie!  If your fathers had been as good at this as you are, Tamriel would be Akaviri domain!''&br;The Potentate had not planned to take credit for Prince Juilek's design, but on the Emperor's reference to his people's fiasco of an invasion two hundred and sixteen years ago, he made up his mind.  He smiled modestly and soaked up the praise.|支配者ヴェルシデュ・シャイエが帝都に凱旋すると、熱烈な歓迎が待っていた。男も女も通りにずらりと並んで、アルド・マラク陥落の象徴である大君主を褒め称えた。王子が帰還していたらこれ以上の群集が出迎えたであろうことはシャイエにもわかっていた。それでも、彼は大いに気を良くしていた。タムリエルの民がアカヴィル人の到着を歓迎するなどそれまでにないことだった。&br;皇帝レマン三世は心のこもった抱擁で彼を出迎えると、やおら王子から届いた手紙を突きつけてきた。&br;「どういうことかね」皇帝はようやく言った。喜んでいながらもとまどっていた。「湖にもぐったと?」&br;「アルド・マラクは、難攻不落の要塞です」大君主はそう言った。「それに加えてわれらの動きを警戒しているモロウウィンド軍が周囲を巡回しています。攻め落とすには不意を突いて鎧の頑丈さにものを言わせて攻撃するしかありません。水中でも呼吸できる魔法をかけることで、われらはヴィベクに感づかれないうちに移動することができました。水中では鎧の重みもさほど気になりません。そして守備のもっとも手薄な砦の西側の水締めから攻め入ったのです」&br;「素晴らしい!」皇帝は歓声をあげた。「驚くべき戦術家だな、ヴェルシデュ・シャイエよ! そなたの父親にもそれだけの才覚があったら、タムリエルはアカヴィルの領土になっていただろう!」&br;実のところ、その計画はジュイレック王子が考えたものだった。シャイエとしては、王子の功績を横取りする気はみじんもなかったが、大失敗に終わった260年前の祖先の侵略のことに皇帝が触れたとき決心したのだった。シャイエは控えめな笑みを浮かべて、おもうぞんぶん賞賛を味わった。|
|21 Mid Year, 2920&br;Ald Marak, Morrowind|2920年 真央の月21日&br;アルド・マラク (モロウウィンド)|
|Savirien-Chorak slithered to the wall and watched through the arrow slit the Morrowind army retreating back to the forestland between the swamps and the castle grounds.  It seemed like the idea opportunity to strike.  Perhaps the forests could be burned and the army within them.  Perhaps with Vivec in their enemies' hands, the army would allow them possession of Ald Iuval as well.  He suggested these ideas to the Prince.&br;''What you seem to be forgetting,'' laughed Prince Juilek. ''Is that I gave my word that no harm to the army or to their commanders during the truce negotiations.  Do you not have honor during warfare on Akavir?''&br;''My Prince, I was born here in Tamriel, I have never been to my people's home,'' replied the snake man. ''But even so, your ways are strange to me.  You expected no quarter and I gave you none when we fought in the Imperial Arena five months ago.''&br;''That was a game,'' replied the Prince, before nodding to his steward to let the Dunmer battle chief in.&br;Juilek had never seen Vivec before, but he had heard he was a living god.  What came before him was but a man.  A powerfully built man, handsome, with an intelligent face, but a man nonetheless.  The Prince was pleased: a man he could speak with, but not a god.&br;''Greetings, my worthy adversary,'' said Vivec. ''We seem to be at an impasse.''&br;''Not necessarily,'' said the Prince. ''You don't want to give us Morrowind, and I can't fault you for that.  But I must have your coastline to protect the Empire from overseas aggressions, and certain key strategic border castles, such as this one, as well as Ald Umbeil, Tel Aruhn, Ald Lambasi, and Tel Mothrivra.''&br;''And in return?'' asked Vivec.&br;''In return?'' laughed Savirien-Chorak. ''You forget we are the victors here, not you.''&br;''In return,'' said Prince Juilek carefully. ''There will be no Imperial attacks on Morrowind, unless in return to an attack by you.  You will be protected from invaders by the Imperial navy.  And your land may expand by taking certain estates in Black Marsh, whichever you choose, provided they are not needed by the Empire.''&br;''A reasonable offer,'' said Vivec after a pause.  ''You must forgive me, I am unused to Cyrodiils who offer something in return for what they take.  May I have a few days to decide?''&br;''We will meet again in a week's time,'' said the Prince, smiling. ''In the meantime, if your army provokes no attacks on mine, we are at peace.''&br;Vivec left the Prince's chamber, feeling that Almalexia was right.  The war was at an end.  This Prince would make an excellent Emperor.&br;The Year is Continued in Sun's Height.|サヴィリエン・チョラックは腹ばいになって壁まで進み、モロウウィンド軍が沼地と砦に挟まれた森の中へ撤退していくのを銃眼からじっと見つめた。絶好の攻撃機会のように思われた。敵軍もろとも森を焼き払ってしまえばいい。ヴィベクさえ捕らえてしまえば、敵軍はアルド・イウバルもおとなしく明け渡すかもしれない。ショラックはその案を王子に持ちかけてみた。&br;「ひとつ忘れているようだけど」ジュイレック王子は一笑にふした。「休戦交渉中は敵の兵士や指揮官に手を出さないと約束しているんだ。アカヴィルでの戦いに誇りは不要なのかい?」&br;「お言葉ながら、私はタムリエルで生まれ育ち、祖国を訪れたことはございません」蛇男は答えた。「が、それでもあなたの流儀はどうも解せない。五ヵ月前に帝都の闘技場で戦ったときもあなたは金銭を求めようとせず、私は一銭も払わなかった」&br;「あれは遊びだから」王子はそう言うと執事にうなずいてみせ、ダンマーの戦士長を迎え入れた。&br;ジュイレックがヴィベクに会うのは初めてだった。この男が神の化身であるという話は聞いていたが、目の前に現れたのはひとりの男だった。屈強で端正な顔した男で、知性にあふれる顔をしていたもののやはりただの男だった。王子はほっとした。ただの男となら話せる。神であるなら話はべつだが。&br;「はじめまして、わが称えるべき好敵手」と、ヴィベクは言った。「お互いに手詰まりのようだな」&br;「そうともかぎりません」王子は言った。「あなたはモロウウィンドを明け渡したくはないし、私としてもそれをとがめることはできません。が、外敵の侵略から帝都を守るためモロウウィンドの沿岸地域はどうしても押さえておきたい。それと、この場所のような戦略の要地である国境の砦もほしい。アルド・ウンベイル、テル・アルーン、アルド・ランバシ、テル・モスリブラもすべて」&br;「して、見返りは?」と、ヴィベクは訊いた。&br;「見返りだと?」サヴィリエン・チョラックは笑い飛ばした。「いいか、勝者はわれらだ。おまえじゃない」&br;「見返りとして」ジュイレック王子は慎重になって言った。「帝国はモロウウィンドを襲わないと約束しましょう。もちろん、そちらから攻めてきた場合は別として。侵略者があれば帝国海軍が助けに駆けつけましょう。それから領土も分け与えましょう。ブラック・マーシュから好きな土地を選んでください。帝都にとって無用な土地であればですが」&br;「悪くない条件ですが」間をおいて、ヴィベクは言った。「即答はできかねますな。シロディールが奪ったぶんだけ補償してくれるなどこれまでになかったことですから。数日の猶予をいただけますか?」&br;「では、一週間後に会いましょう」王子はそう言って微笑んだ。「それまでにそちらが攻撃をしかけてくることがなければ、秩序は保たれるでしょう」&br;ヴィベクは王子の私室をあとにした。アルマレクシアの読みの正しさを感じながら。戦争は終結した。ジュイレック王子は立派な皇帝になるだろう。&br; 時は南中の月へと続く。|
-この書籍内容は[公式英語版1.9.32.0] [公式日本語版1.8.151.0]それぞれをCreation kit を使い転載したものです。目的は個々の記憶にあるTES世界観の補完です。忘れたときにさっと見れる、手帳に書いたスケジュールを確認するように。を目指していますが、ルールに抵触するという問題もあります。

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